シャー・ジャハーン・モスク

ムガール帝国第5代皇帝のモスク。
タッタの街への皇帝の感謝を表わしたモスクです。
タッタ近郊のマクリの丘と共に世界遺産になっています。
2014年12月訪問

写真はモスク礼拝室入口


タッタの街はパキスタン南東部、インダス川の河口付近のデルタ地帯に位置します。古来から港湾都市として栄え、シンド地方を支配したサンマー朝(14~16世紀)、アルグン朝(16世紀)、タルハーン朝(16世紀)の都として、その後もムガール帝国の港湾都市として栄えていました。
18世紀になるとインダス川が流れを変え、街も衰退することとなりますが、長い隆盛の時代に造られた建造物が世界遺産になっています。ムガール帝国第5代皇帝シャー・ジャハーンが建立したシャー・ジャハーン・モスクは、その代表ともいえる美しい建造物です。

モスク入口
かっては噴水が見事だったそうですが、デング熱流行で水が抜かれています。
ちょっと残念



モスクまでは庭園になっています。左右対称のペルシャ風庭園。



モスク正面まで来ました。茶色の壁に青がポイント。ここから入るのかと思ったら、入口は横にあるそうです。

入る前にモスクの歴史をまとめます。

このモスクはムガール帝国第5代皇帝シャー・ジャハーンが建立したものですが、それは皇帝のタッタの街への感謝の意味を込めたもの。

シャー・ジャハーンの父4代皇帝ジャハンギールは晩年体を壊し、妃であるヌール・ジャハーンが実権を握るようになります。
シャー・ジャハーンは元々出来が良い皇子で、3代アクバル大帝にも可愛がられていましたが、ヌール・ジャハーンによって遠ざけられようとしたことから、父に反旗を翻し、以後、父ジャハンギール帝が死去し、シャー・ジャハーンが帝位に着くまで戦いと逃走の5年間を過ごしました。

その時にシャー・ジャハーンを保護したのがタッタの街の人々。
シャー・ジャハーンは皇帝となってから、タッタの人たちへの感謝を込めて、タッタの金曜モスク(街の中心となるモスク)としてこのモスクを建立したのです。
完成したのはシャー・ジャハーンの死後、第6代皇帝アウラングゼーブの時代でした。


シャー・ジャハーンと言えばタージ・マハルを建てた皇帝。
彼の建てた建造物は、その華麗さで有名です。
そんな5代皇帝が感謝の気持ちで建てたというのですから、さぞ美しいのでしょう。
期待感が高まります。入口付近から中を覗いたら、凄い綺麗。
これは期待できそうです。




モスクに入ってすぐの入口ホール
素晴らしい。期待を裏切らない美しさ。



実に美しい青の世界
入口ホールは2連のドームを備えた豪華な造り

青を基調に金色が眩しい
 
 天井部分

このモスクは長方形の中庭を挟んで、東側に入口ホール、西側に礼拝室が配置され、それをつなぐ形でニ廊式の回廊が囲んでいます。全部で93もの大小のドームで構成されているのだとか。

 入口ホールから通じる回廊
 中庭に接した回廊


中庭に出ました。回廊がぐるりと取り巻いています。


このモスクは中庭を囲んだ回廊部分のそれぞれの中央にイーワンを備えています。「イーワン」というのは大きなアーチ開口を四角く枠取りした建築要素を言います。このモスクのように4辺の中央にイーワンがあるのは「四イーワン型モスク」と言ってペルシャに多い様式だそうです。また、上の写真だと白いドームがいくつか見えると思いますが、既に書いたように、このモスクは大小93ものドームがあり、その構造によって説教師の声がモスクの隅々にまで響き渡るようになっているのだそうです。凄いですね。また、このモスクはミナレットがないのも特徴です。


モスク西側に位置する礼拝室


青に黄色がアクセント
入口の黄色いところにはコーランが彫られています。

礼拝室入口
 
 入口から見た礼拝室


上を見上げてみました

礼拝室入口付近の天井
 
 礼拝室の天井

青も美しいですが、白も美しい。
夜空の星のようだと評されることが多いそうです。
また、礼拝室の天井は籠状にアーチが連続しています。
これでドームを支えているのだそうです。


メッカの方角を向くミフラーブ
 
 ミフラーブの近くには説教師の台

ところどころ茶色いのは煉瓦本来の色を残してるんでしょか。

 メッカの方角を示すミフラーブを撮ってみました。
青いタイルにコーランが書かれています。
 礼拝室から通じる回廊
礼拝室が独立してないのもペルシャ風。


美しい礼拝室ですが、良く見るとタイルの落剝など結構傷みも目立ちます。
でも、タイルの貼り方が推測できて、ちょっと面白い。

タイルを円形に切って貼ってたようです。
 
 タイルの組み方が分かります。

職人技っていうのは凄いですね。


礼拝室を堪能したので中庭に出ました。
礼拝室側から入口ホール方向を撮ってみました。ここからだと大小のドームが良く見えます。



最後は回廊を通って帰ることにしました。

回廊が2連式なのが分かるでしょうか。
 
 モスクは現役。お知らせが貼ってありました。


回廊部分も傷みが目立ちますが、やはりタイルが面白い。
   


実に美しいモスクでした。
さすがシャー・ジャハーン。
パキスタンで最も美しいモスクとも言われるそうです。


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参考文献

ユネスコ世界遺産⑤(講談社)
世界遺産を旅する8(近畿日本ツーリスト)
世界遺産の旅(小学館)

基本的には現地ガイドさんの説明を元にまとめています。