マクリの丘

タッタ郊外のマクリの丘
マクリとはリトルメッカの意味
イスラム世界最大級の墓地です
2014年12月訪問

写真は建ち並ぶ霊廟


マクリの丘はタッタの街から3㎞ほどのところに位置する丘です。タッタの街はインダス川河口付近のデルタ地帯に位置し、古来から栄えてきました。その街の近くの丘はマクリ・ヒルすなわち「リトルメッカ」の丘と呼ばれ、メッカに行けない人々がここに墓を建ててきました。
マクリの丘に墓が建てられるようになったのは13世紀ころからで、その後、18世紀にかけて王や聖者など様々な人々の墓が造られ続けます。その広さは15㎢にも及び100万墓もの墓碑や霊廟が残っているのだそうです。イスラム世界最大級のネクロポリス(墓地)であり、タッタの歴史的建造物として世界遺産となっています。

広大な丘に残る墓碑。遠くに見えるのは聖者廟だそうです。
現地ガイドさんによると13世紀に聖者廟が建てられたのが始まりとのことでした。



広大な墓地の全てを見るわけには行きません。
私達のツアーが訪れたのは17世紀の王や大臣たちの霊廟
ごらんの通り、幾つもの霊廟が建ち並んでいます。



イサハーン・タルハーン廟

最初に訪れたのはイサハーン・タルハーン廟
霊廟は塀で囲まれています。



大きなドーム屋根が立派


イサハーン・タルハーンは17世紀にこの地を治めたタルハーン朝の王です。この霊廟は1640年ころに建てられました。塀の中の霊廟は2階建て。材質を聞きそびれましたが、砂岩でしょうか。白いドーム以外は彩色もなく、色つきタイルは一切使われていません。霊廟の構造は柱が目立ち、後のモスクなどとはちょっと趣が異なります。




霊廟内部
王や家族の棺が並びますが、実際には棺の下約1.5mのところに埋葬されているそうです。
ティムールの墓と同じ構造です。

 色はないけれど美しい空間です
 窓の美しい浮彫


棺に彫られているのはコーランの一節



霊廟の柱や天井の彫りも美しい。
インドのファテープル・シークリーの影響を受けているとの説もあるそうです。
   


ちょっと移動すると次の霊廟

ジャン・ババ廟



少し離れた所に立つジャン・ババ廟はイサハーン・タルハーンの父の霊廟です。規模はイサハーン・タルハーン廟に比べると数段小さいですが、柱が目立つ構造で、やはり彫が美しい。イサハーン・タルハーン廟同様に彩色は一切施されていません。元々はドームがあったようです。

霊廟入口の見事な彫り。実に細かく美しい。



陽射しが強いので影が出来てしまいますが、美しい彫りが分かると思います。
 
 

イサハーン・タルハーン廟の近くに戻ります。

パキ・ベグ・ウズベク廟



パキ・ベグ・ウズベグ廟は最初に見学したイサハーン・タルハーン廟のすぐ隣にあります。これは大臣の霊廟ということですが、これまでの霊廟と違い美しい青色が目立ちます。構造もモスクみたいになっています。

傷みは激しいですが残る青色が印象的
 
 入口や中の青いタイルが綺麗


 釉薬タイルを組み合わせたドーム天井
 絵付きタイルが残っています

この霊廟が建てられたころは絵付きタイルは貴重品だったんでしょうね。
ポイント的に使われていました。

今度はイサハーン・タルハーン廟の裏手の方に移動します。


ディワン・シュラファ・ハーン廟



こちらも大臣の霊廟。小さいながら整った印象を受けます。
ドームにも色タイルが使われているようです。

入口の水色がきれい
 
 色タイルを組み合わせたドーム


霊廟内部
入口付近にだけ絵付けタイルが使用されています。貴重品だったのでしょうね。
棺の彫りも美しい
   



ここで自由時間となったので、ちょっと遠くに見える美しい霊廟を見に行きました。

ジャーニィ・ベッグ廟



青い色が美しい霊廟です。
初めは鍵がかかってたんですが、管理人さんが走って来て鍵を開けてくれました。
ディワン・シュラファ・ハーン廟よりタイルが多用されているようです。

色タイルや絵付けタイルが美しい
 
 霊廟内部もタイルが鮮やか


釉薬を付けた色タイルを組み合わせたり、ポイントに絵付けタイルを使ったり
当時の職人たちの工夫がうかがわれます。

 
 


建築様式の変化が分かって面白かったけど
良く考えると霊廟だからお墓巡りなんですよね。


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参考文献

ユネスコ世界遺産⑤(講談社)
世界遺産を旅する8(近畿日本ツーリスト)

基本的には現地ガイドさんの説明を元にまとめています。