ニダプク石窟

インド最北の地・ラダック
杏で有名なサスポル村の崖に
壁画で埋め尽くされた洞窟があります。
2014年8月訪問

石窟内の壁画


サスポルの村はレーから西に約62キロ。幹線道路沿いの村です。杏の里として有名な場所だそうで、杏の花の季節は大変美しいということです。この村の北側は崖になっていて、かって僧侶が修行のため使用していたという多くの洞窟があり、その中のいくつかには壁画が残されています。

サスポルの村



壁画が残されている洞窟の中で最も壁画が見事だと言われているニダプク石窟を見学することになりました。車から降りても、すぐには洞窟がどこか分かりません・・・。

どこだと思ったら、現地ガイドさんが「あそこ」と指さして教えてくれました。

道沿いの崖の上の方に赤い扉が見えます。

右の写真で赤く囲ったのが、その扉。
写真に撮ったものの小さすぎて分からないかと思って赤く囲ってみたのですが・・・分かるでしょうか。

なんというか・・・随分上です。しかも、ちゃんとした道は見えません。
見るからに足場は悪いです・・・・。

現地ガイドさんに従って登って行きましたが、正直しんどかった。

日本でも、こんな崖を登るのは、それなりに大変だと思いますが、なんせ標高3000mを軽く越えてますから。

ラダックの人たちにとっては大したことない場所なんでしょうか。それとも修行の場だから、やっぱり大変なのか・・・。

そんなこと考えながら必死で登りました。


でも、苦労して登った価値はあります。
小さな石窟内、入ると正面に見える壁画。


天井はごつごついた石のままですが長方形の部屋のようになっています。
洞窟の広さは6畳間くらいでしょうか・・・・
その四方の壁にびっしりと壁画が描かれていました。

高僧と多くの仏たち
 
 お釈迦様と二大弟子


チベット密教独特の異形の仏たちが壁を埋め尽くしています。

   


なんとも言えない迫力

   


ニダプクのニダは太陽と月、プクはお堂、という意味。つまり太陽と月のお堂ということになります。
現地ガイドさんによると、ここは11世紀ころから修行の場になっていて、朝から晩まで外の太陽と月を眺めて修行したことから名付けられたのだそうです。ここで瞑想をしていたわけですが、壁画を描くのも修行のひとつ。我らが現地ガイドさんはお坊さんなのですが、彼によると、壁画を描いていると、次第に余白があるのが怖くなって来て、どんどんと描き込んでいくのだそうです。お坊さんならではのお話です。本当に、余白恐怖症なんじゃないかと思えるほど描き込まれています。




一人の僧が描きこんだものなのか、何人もの僧が描き足していったのか・・。
石窟内全体の印象としては赤色が強い気がします。

   


正確な位置は聞きそびれたのですが、村の北側の崖にあることや太陽の位置などから、たぶん、この石窟は南面していて、南側が入口になっているのだと思います。入口から入って左側、たぶん西側の壁は正面の壁とは微妙に印象が違いました。なんというか、穏やかな印象を受けます。




極楽浄土を描いたもののような印象を受けます。


 獅子がかわいい。
なんというか幸せそう。
 


石窟の入口がある側、たぶん南側だと思うのですが、ここには大黒天といった護法神が描かれていました。アルチ僧院もそうでしたが、入口の付近に護法神を描くというのはチベットでは多い様式のようです。出入り口近くで、お堂を守る、と言った感じなのでしょうか。




ちょっと愛嬌もありますね。



ニダプク石窟、なんというか凄い興奮してしまった。
修行僧の思いと言うか、なんとも言えない迫力。
頑張って登って良かった。


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参考文献

ダライ・ラマの仏教入門(光文社 ダライ・ラマ14世著)
増補チベット密教(筑摩書房 ツルティム・ケサン 正木晃 著)
図説チベット歴史紀行(ふくろうの本 河出書房新社 石濱裕美子著)
ラダック密教の旅(佼成出版社 滝雄一・佐藤健著)
ラダックザンスカールトラベルガイド(ダイヤモンド社)
チベット(旅行人)

基本的には現地ガイドさんの説明を元にまとめています。