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ヴィラ・ロマーナ・デル・カサーレ 
       
      シチリア中央部の緑豊かな地 
      皇帝の別荘とも言われる古代ローマの建物 
      次々と現れる豪華なモザイクは圧巻 
      2017年8月訪問 
       
      写真はビキニ姿の少女のモザイク 
        
       
      
        
          
            ヴィラ・ロマーナ・デル・カサーレ(カサーレの古代ローマ別荘)はシチリア島中央部の山上の小さな町ピアッツァ・アルメリーナの町外れにある遺跡です。この遺跡は第二次世界大戦後に林の中から発見・発掘されました。発掘の結果、なんと63もの部屋があり、その多くが素晴らしいモザイクで飾られている豪華な古代ローマ時代の別荘であることが分かったのです。 
             
            モザイクは21種類の石と16色の色ガラスで造られており、北アフリカの職人の手によるものと考えられています。モザイクの床面積は、なんと全部で3500uにも及びます。 | 
           
        
       
       
      
        
          
             まあ、実は3500uと聞いてもピンと来なかったのですが、行ってみたら、とてつもない規模であることが実感できました。 
             
            左の写真は遺跡の駐車場のお土産屋さんに飾ってあった古代ローマ別荘の復元図。 
            多くの建物・部屋からなる巨大な建物だったことが分かるかと思います。 
             
            63あるという部屋も一つ一つが大きく、そこを飾るモザイクも立派なもの。ビキニ姿の少女たちが有名ですが、他にも素晴らしいモザイクが数多く残っています。通常の遺跡だったら1つあれば観光の目玉になりそうなレベルのモザイクが、次から次に現れ,圧倒されます。 | 
           
        
       
       
      
        
          
             この別荘、ローマ帝国後期の3〜4世紀に建てられたものであることは分かっていますが、その主については諸説あるようです。 
            現在のところ、有力なのがローマ帝国西部を支配していたマクシミアヌス帝の狩りの別荘だったという説。 
             
            ローマ帝国後期の285年、広大になり過ぎた帝国を治めるため皇帝ディオクレティアヌスは領土を東と西に分け、副帝マクシミアヌスを西の統治者とします。翌年にはマクシミアヌスはディオクレティアヌスと並ぶ正帝となりました。 
            当時、ディオクレティアヌスは教養にあふれた賢帝としてゼウスと、そして農民あがりながら軍事力に優れたマクシミアヌスはヘラクレスと呼ばれていたそうです。知と勇で帝国を治めようとしたんでしょうね。 
             
            右は皇帝マクシミアヌスではないかと言われているモザイク。画面中央の男性の被っている帽子が当時の皇帝が被っていたものであることから、別荘の主がマクシミアヌス帝であることの証拠とされています。もっとも、このモザイクは大狩猟の廊下と呼ばれる巨大な廊下を飾るモザイクの一部なので、皇帝を足で踏むことが許されるはずがない、という否定説もあるそうです。 | 
           
        
       
       
      
      
        
          
              
            左は広大な別荘の案内図。青字で施設名を、ピンクで見学路を書いてみました。 
             
            遺跡入口から入るとまず、浴場群と運動場が見えて来ます。その先が正門。かっては正門を入って真っ直ぐ進んだ場所に浴場や運動場があったことになります。 
            正門を入って右の玄関を進むと広大な中庭の周囲に客室や使用人の部屋が並びます。 
            中庭とバジリカ(大集会場)の間にある大きな廊下が大狩猟の廊下。大狩猟の廊下の先のバジリカ周囲の部屋は私的空間でした。 
            そして、楕円形の中庭と隣接する大食堂(修復中)は冬の食堂だったとされています。 | 
           
        
       
       
       
      浴場群と運動場 
       
      遺跡に入って最初に見えてくる浴場群 
      温水浴室・サウナ・マッサージ室・冷水浴室、そして運動場と続きます。 
      実際は逆の順番に、まず運動場で汗をかいてから浴場に向かったみたいです。 
       
      
        
          
             ボイラー室 
            立派なボイラー室が3つ 
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             マッサージ室。奴隷がマッサージしてくれます。 
            オイル瓶を持った奴隷もいます。 
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      冷水浴室の海の精ネイレス 
        
       
      
        
          
            冷水浴室 
            モザイクだけでなく円柱も立派。 
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             円形闘技場の間 
            運動場だった場所です。 
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      円形闘技場のモザイクも頑張って撮ってみました。遠いので撮りにくい。 
       
      
        
          
            馬車競技の場面 
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             無料のパンをふるまわれる観客たち 
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      古代ローマ帝国において市民に無料で与えられたという「パンと競技(娯楽)」を描いています。 
       
       
       
      正門・玄関・中庭左側 
       
      
        
          
             浴場群を見ながら進むと、かっての正門に出ます。写真は内部から撮ったもの。 
             
            正門は、かってはローマ式凱旋門の形をしており、半円アーチの入口が3つありました。 
            アーチの下には噴水も付いている豪華な造り。 
             
            アーチを抜けると庭になっており、真っ直ぐ進むと浴室群。そして、右手が玄関になっています。 
             
            玄関は広い造りで、建物内部に入れない人たち(開放奴隷や貧しい人々)を応対する場所でもありました。屋敷の主人は、表敬訪問の名目で訪れるそういった人たちに心づけを渡さないといけなかったんだそうです。 | 
           
        
       
       
      玄関を入ると遺跡内に設けられた通路を登って上から下のモザイクを見学することになります。 
       
      
        
          
             玄関の間と、その先中庭を囲む回廊 
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             燭台を持って客を迎える主人 
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             広大な中庭 
            中央には噴水。憩いの場でした。 
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             中庭を取り囲む回廊 
            丸の中に動物が描かれています。 
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      見学順路に従って、玄関から中庭左側の部屋に向かいます。 
      まずは私的更衣室。運動場・浴場に続く部屋だそうです。 
       
      
        
          
             子供たちを浴場に伴う奥方 
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            中央が奥方、両脇が子供、左右が侍女 
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      使用人の部屋。使用人の部屋はモザイクが幾何学模様。 
      
       
       
      サヒーニ族の女性略奪の間 
       
      
        
          
             使用人の部屋が続いた後、「サヒーニ族の女性略奪の間」という物騒な名前が付いた部屋に出ます。 
             
            ローマ建国当時、女性の数が少ないことに悩んでいたローマ人は祭りを開き、サヒーニ族など近隣の人々を招きます。そして、客たちが祭りに気を許した隙に女性たちに襲い掛かり略奪してしまったのです。当然、サヒーニ族は怒り、戦になりそうになりますが、戦いを避けようとサヒーニ族の女性たちが仲裁をし、結果、和平が成立し、ローマ族とサヒーニ族が手を携えてローマを発展させていったのだそうです。 
            いわゆる建国神話なんでしょうが、とんでもない話でもあります。 | 
           
        
       
       
      
      
        
          
            祭りで踊る美しいサヒー二族の女性 
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             女性に襲い掛かるローマ人の男性 
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      それにしても、この女性凄く綺麗で魅力的。 
        
       
       
      四季の間 
       
      円形の中に春夏秋冬を表わす人物像が描かれたモザイク 
      
        
          
            幾何学模様と人物像の組み合わせ 
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            春を示す人物  
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      キューピットたちの魚釣りの間 
       
      
      
        
          
            可愛らしいキューピットたちの魚釣りのモザイク 
            魚はローマ市民には贅沢品だったそうです。 
            それにしてもキューピットに釣りをさせるというのは 
            面白いアイデアですよね。 
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      小狩猟の間 
       
      
        
          
              
            「小狩猟の間」という名前が付いていますが、この一角では最も大きな部屋です。「小」というのは、この部屋の先の「大狩猟の廊下」との比較で名づけられているのでしょう。 
             
            この部屋は南に面していることから、冬季用の食堂だったと考えられているそうです。お客をもてなすための豪華なモザイクです。 
             
            モザイクのテーマである狩猟はローマ人たちにとって娯楽であり、食料を調達するための大事な仕事でもありました。 
             
            ここでは兎狩りや鹿狩り、猪狩り、鳥狩りの場面が描かれているほか、狩りの女神ダイアナに狩りの成果を祈る場面、狩りの合間の森の中での食事の場面などが描かれています。 
             
            猟犬の動きも楽しいし、当時の狩りの方法なども良く分かります。 
             
            この別荘がマクシミアヌス帝の狩りの別荘だとされることや、かって、この別荘の周囲が広大な森林地帯だったことを考えると、別荘付近での狩猟の場面を描いているのかもしれません。 
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             ダイアナに祈る場面 
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             鹿狩り 
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      猪狩りの場面。傷つき倒れた仲間を助けています。 
        
       
       
      大狩猟の廊下 
       
      
        
          
              
            小狩猟の間を出るとすぐに大狩猟の廊下です。 
             
            大狩猟の廊下は幅3m、長さ60m以上という文字通りの「大廊下」。左の写真はバジリカ側から撮ったもの。廊下の広さと見学用の通路が分かるかと思います。 
             
            この広い大廊下に激しい狩猟の場面が延々と描かれています。 
            実は狩猟というのは食事や娯楽のためだけではなく、非常にお金になるものでもありました。 
             
            というのも、猛獣を生け捕りにすれば、円形闘技場での猛獣狩りのショーのために高く売ることができたからです。 
             
            ここで描かれている狩猟は円形闘技場でのショー用の猛獣を生け捕りにするためのもの。小狩猟の間に描かれているのが猪や鹿だったのに対し、ライオンやトラ、さらには空想上の動物であるグリフィンが描かれています。 
             
            狩猟の場面もアフリカやインドとされています。 
            当時のローマ帝国はアフリカをも支配していたのでアフリカでの狩猟は納得ですが、インドまで行ってたとしたら驚きです。 | 
           
        
       
       
      後ろで動物を襲ってるのはヒョウ?ライオン? 
        
       
       
      
        
          
             後方ではカモシカを襲うヒョウ 
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             駝鳥や孔雀を船に運んでいます。 
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      動物をローマに運ぶ船 
        
       
       
      運ばれるサイ 
        
       
       
      左下に皇帝マクシミアヌスの姿。後方では猛獣との戦い。 
        
       
       
      
        
          
            象やラクダ。 
            アフリカでしょう。 
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             光ってしまいましたがトラとグリフィン 
            インドが舞台のようです。 
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      中庭右側 
       
      大狩猟の廊下から中庭右側の一角に入ります。 
       
      オルフェウスの間 
       
      オルフェウスが描かれているはずなのですが・・・良く分からない。 
      オルフェウスの竪琴に聞き入る鳥や動物を描いているようです。 
      置かれている像は音楽の神アポロ 
        
       
       
      ビキニの少女の間 
       
      一番有名かもしれないビキニの少女たちのモザイク 
        
       
      ローマ帝国の時代からビキニがあったとは・・・ 
      少女たち、実はスポーツをしています。スポーツ用の服装だったんですね。 
       
      ボール競技? 
        
       
      左の女性は審判。優勝者に冠を授けています。 
        
       
       
      キューピットのブドウ栽培と収穫の間 
       
      こちらのキューピットはブドウ栽培をしています。かわいいですね。 
        
       
       
       
      楕円形の中庭 
       
      一度建物の外に出ます。楕円形の中庭。 
      隣接する大食堂には見事なヘラクレスのモザイクがあるそうなのですが、残念ながら修復中。 
      
       
       
       
      バジリカ周辺 
       
      
        
          
              
            中庭から大狩猟の廊下を挟んでバジリカ(大集会場)がありますが、このバジリカ周辺の一角(黄色で囲んだ部分)は別荘の主の私的空間だったとされています。 
             
            すなわち、玄関から見てバジリカの右側には、半円形の吹き抜け(アトリウム)と、その奥のアリオンの居間がありますが、そこが主の部屋で、その左右が子供たちの部屋。アクリウムの右側が娘の部屋で左側が息子の部屋とされています。 
             
            そして、バジリカの左側は奥方の私室だったとされています。 
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      音楽と演劇の寝室 
       
      アトリウムの右側。楕円形の中庭に一番近いのが娘の寝室 
      
       
       
      小さな闘技場の前室 
       
      娘の寝室の前室は実にかわいらしい。 
      馬の代わりに鳥に車をひかせてます。鳥は四季を意味してるのだとか。 
        
       
      娘の部屋に、こんな可愛いモザイクを描くなんて、優しいお父さんですね。 
        
       
       
      アトリウム 
       
      主の私的空間の中心・半円状のアトリウム。吹き抜けとなっています。 
      ここでもキューピットが魚釣りをしています。主はキューピットがお気に入り? 
      
       
       
      アリオンの居間 
       
      
        
          
             アトリウムの奥がアリオンの居間。広い部屋。 
             
            中心で竪琴を奏でているのがアリオン。 
            美しいので一見女性かと思いましたが、実は男性です。 
             
            竪琴の名手で美青年というとオリフェウスが有名ですが、アリオンも竪琴の名手で美青年だったとされています。 
             
            アリオンはシチリア島出身。音楽コンクールに出場し優勝しますが、帰路、船上で水夫たちに賞金を狙われます。 
             
            せめて音楽家らしく死にたいと、アリオンは竪琴で一曲を奏で、自ら海に身を投げましたが、彼の演奏に聞き入ったイルカ達がアリオンを助け、生まれ故郷まで運んだのだそうです。 
             
            なんでも、この時の功績が認められ、イルカは天のイルカ座になったんだとか。 
             
            モザイクでは竪琴を奏でるアリオンの周囲をトリトンやヒッポカンポス、キューピット、そして海の生き物たちが取り囲み、演奏に聞き入っている様子が描かれています。大きくて、とても豪華なモザイクです。 | 
           
        
       
       
      アリオン部分をアップで撮ってみました。 
        
       
       
      子供たちの狩りと花の寝室 
       
      
        
          
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            アクトリウムを挟んで左側にあるのが主の息子の寝室。 
            男の子の部屋にしてはかわいすぎる気もしますが、子供たちが兎を追いかけたり、バラの花を摘んでいたりします。 
            孔雀がいたりするのも綺麗。分かりにくいですが、左の写真の上の方にバラの籠を2つ運んでいるのは少女なんだそうです(下の写真)。 | 
           
          
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      エロスとパンの前室 
       
        
       
      
        
          
            | 息子の寝室は、男の子にしては、ちょっと可愛すぎるかな、と思いましたが、その前室は非常に男の子らしいともいえます。このモザイク、エロスとパンが描かれていますが、エロスは理性をパンは本能を表わしており、両者の戦いを審判が見ているのは、理性と本能の正しいコントロールが必要であるということを表わしているのだそうです。 | 
           
        
       
       
      中央左がパン(本能)、右がエロス(理性) 
        
       
       
      バジリカは後で見学するということで、一旦外に出てからバジリカの左側の奥方の私室部分へ 
       
      ポリュペモスの前室 
       
        
       
      
        
          
             奥方の寝室・・・ということは主の寝室でもあるのでしょうけれど、その前室にあるのが、このポリュペモスのモザイク。 
             
            ポリュペモスというのは、トロイ戦争の英雄オデッセウスが故郷に帰還する途中出会った一つ目の巨人。 
             
            オデッセウスは巨人に仲間を何人も食べられてしまいます。そこで、オデッセウスは巨人にワインを勧めて泥酔させ、巨人の一つ目を仲間と協力して先を尖らした棒で潰し、羊の腹に隠れて逃げ出します。 
             
            これはオデッセウスが巨人にワインを飲ませるシーン。巨人は一つ目のはずですが、この巨人は三つ目です。ローマでは話が違う形に伝わったんでしょうか。 
             
            それにしても、夫婦の寝室の前室のモザイクが、巨人からの逃走のシーンというのは何故なんでしょう。 
             
            オデッセウスの知略を示すものだとか言われますが、別に寝室の前室に描かなくても良い気がしますが、う〜〜ん。 | 
           
        
       
       
       
      愛の寝室 
       
        
       
      
        
          
            | 夫婦の寝室は「愛の寝室」と呼ばれています。幾何学模様と女性の顔が描かれていますが、やはり気になるのは抱き合うカップル。女性はお尻を見せていて、なんともエロチックです。 | 
           
        
       
       
        
       
       
      バジリカ 
       
      最後にバジリカ(大集会場) 
        
       
      
        
          
             バジリカ(大集会場)はローマ帝国時代に裁判や商取引のために造られた集会所です。 
             
            このバジリカ、入口には2本の円柱があり、内部の全長は約30m。 
            とても広々とした部屋です。元々は部屋の奥にヘラクレスの像が置かれていたそうです。 
             
            モザイクで有名なカサーレの別荘ですが、このバジリカにはモザイクはありません。 
            代わりに、バジリカの床は大理石でできており、色大理石で飾られていました。とても貴重で豪華なものだそうです。 
             
            しかし、良く見ると、なんとなく床が歪んでいるのが分かります。 
             
            豪華なカサーレの別荘は4世紀に地震に襲われたといいます。その時に生じた歪みでしょうか。地震の後も、カサーレの別荘は人々に使われていましたが、12世紀の地滑りにより別荘は土に埋もれました。 
            その結果、かえってモザイクが素晴らしい状態で保存されることになったのですが、20世紀に発見・発掘されるまで、これだけの建物が忘れ去られ、その主が誰だったか分からなくなっていたというのも不思議な話です。 | 
           
        
       
       
       
      遺跡観光の拠点となるピアッツァ・アルメリーナの町も可愛い町でした。 
      シチリアの町は防御のためか山の上に造られたことが多いようです。 
        
       
       
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参考文献 
       
      ピアッツァ・アルメリーナ(日本語版) 遺跡にて購入 
      芸術と歴史の島シチリア(日本語版) BONECHI シチリアで購入 
      シチリアへ行きたい 小森谷慶子・小森谷賢二著 とんぼの本 新潮社 
       
基本的には現地ガイドさんの説明を元にまとめています。 
 
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