コーケー

10世紀に16年間だけ都だったコーケー。
つかの間の王都には7層からなるピラミッドなどが残ります。
2006年12月訪問。

写真はピラミッド型寺院



928年、ジャヤヴァルマン4世は都をアンコールの北東約80キロのコーケーに移しました。遷都の理由は不明ということですが、ジャヤヴァルマン4世は前王の母方の伯父にあたり、即位前は地方領主としてコーケーの地を治めていたというので、何らかの王室内の確執があったのかもしれません。
ジャヤヴァルマン4世の息子は王位を継承したものの、間もなく亡くなり、次のラージェーンドラヴァルマン王はアンコールに再び遷都したため、コーケーが首都だったのはわずか16年間でした。



プラサート・トム

プラサート・トムは10世紀前半にジャヤヴァルマン4世が建設したシヴァ神を祀る寺院です。
車を降りてすぐのところに、美しい連子状窓が残っていました。
これはプラサート・トムの第4周壁だそうです。




これは第3周壁の東塔門。
プラサート・クラハム。赤い寺という意味だとか。
煉瓦製で、ところどころに白い漆喰が残っています。
コーケーはロリュオス遺跡群が築かれた時代から50年も経っていません。
おそらくロリュオス遺跡群の建築物のように漆喰で美しく飾られていたのでしょう。
創建当時は赤い寺ではなく、白く輝く塔門だったはずです。




この門も昔はさぞ美しかったのでしょう。




門をくぐると、まず、赤い塔門が見えました。
この建物も煉瓦製です。結構、煉瓦製の建物が多いですね。
参道の両側の列柱は、片方は倒れたままになっていました。
次の門は結構怖い。崩れそうですが大丈夫なんでしょうか。

   


美しい彫刻が転がっていました・・・もったいない。
シヴァ神の乗るナンディだと思います。





門を幾つもくぐってピラミッド状の建物に出ました。



このピラミッド状の建物は、高さは35m。砂岩で作られ、7層の壇になっています。これはジャヤヴァルマン4世が即位に当たり建立した建物で、この頂上に3mもの巨大なリンガを置いたのだそうです。儀式を行った場所とのことで、レリーフなどはありませんでした。
また、リンガだけでなく、頂上にはガルーダの像も置かれていて、現在、その像はプノンペンの国立博物館に収められているそうです。

プラサート・トムにはピラミッド以外には、余り建物は残っていませんでしたが、これはリンガ塔。中にリンガが収められています(ちょろっと見えてます)。リンガ塔はいくつも残っていました。この寺院、とことんリンガです。王のシヴァ神信仰が強かったんでしょうね。





コーケーは少し前までは地雷で観光など到底できる状態にはありませんでした。現在、遺跡周囲の地雷撤去は終わっていて、道を外れなければ安心して観光することができます。

しかし、今でも遺跡や道から少し離れた場所では地雷の撤去作業が続けられていて、目印の杭が立っていたりします。





プラサート・クロチャップ

少し離れたところにプラサート・クロチャップがありました。
ここも門があります。
この門が発展してバンテアイ・スレイの門になったのかな、と思ったりしました。
バンテアイ・スレイの40〜50年くらい前の建物のはずです。




こちらの建物にはレリーフも残っていました。
ナンディに乗ったシヴァ神です。本当に、この遺跡はシヴァ尽くしです。
まだまだ稚拙なところもありますが、屋根飾りの装飾は美しい。
色がピンクだからか、やっぱりバンテアイ・スレイを思い出します。





プラサート・ニンクパウ


プラサート・ニンクパウは車で少し移動したところにありました。

「ニンクパウ」とは「黒い女性」という意味。

確かに黒いです。

この寺院、なぜ黒いかというと、なんと野焼きをするから。

つまり、煤けて黒くなっているわけで、寺院本来の色とか、何か意味があるとかではないわけです。

結構、形のいい寺院なのに、焼いちゃったりしていいんでしょうか。

そんなことを言って見学していたら、本当に付近で野焼きが始まりました。

始めは面白がって野焼きの様子を見学していたんですが、結構、火の勢いが強い。

このままだと、寺院と一緒に焼かれかねないので、途中で急いで退散しました。

しかし、文化財保護とかは、いいんでしょうか。
いくら石組みの寺院とはいえ、焼いちゃって・・・。


迫りくる野焼きの火





プラサート・プラム



プラサート・プラムには5つの建物があります。シヴァ・ビシュヌ・ブラフマー3神のためのそれぞれの塔と2つの経蔵です。
建物は煉瓦造り。コーケーでは煉瓦造りの建物に漆喰を塗るという建築が多かったようです。

とはいえ・・ここは建物より、建物に巻き付いた樹木が見どころかもしれません。凄いです。

   



最初にカンボジアを訪れた2002年には到底行くことは無理と言われていた遺跡でしたが、2006年には簡単に車で行くことができて、あっけないほどでした。

この日はシェムリアップのホテルを出てから、ロリュオス遺跡群→ベンメイア→コーケーと見学をしてシェムリアップのホテルに戻っています。朝7時半にホテルを出る強行軍ではありましたが、それにしても、本当に観光しやすくなったものです。ベンメリアからは車で約1時間でした。


カンボジアの遺跡に戻る

東南アジアの遺跡に戻る



参考文献

アンコール 遺跡を訪ねる旅 日本語版(ARCHIPELAGO PRESS ディエリー・ゼフィー箸)

基本的にガイドさんの説明に基づいてまとめています。